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広東語学院の先生や学生たちによる香港レポートのページ

電影・明星・音楽 - vol.136月10日/'03
「ダブル・ビジョン」(雙瞳)
日本公開!

電影・明星・音楽
レポート/ by  水田美和 
D O   U B   L   E     V   I   S   I   O   N
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〜  「ダブル・ビジョン」(雙瞳)日本公開!〜
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2002年10月25日から台湾で公開された「双瞳」は、これまでの台湾の興行成績の記録を塗り替える大ヒットとなった。台湾では現在も特別版がロングラン上映中だ。台湾角川から「双瞳研究読本」と銘打った豪華電影特集本や小説本まで売り出され、一大ブームを呼んだ。リピーターも多いらしい。私も東京ファンタスティック映画祭アジアナイトでの上映を皮切りに、釜山映画祭、そして香港での上映中にもこの映画を観た。上映される国によってバージョンや言語が違うので、全く飽きない上、観るたびに新しい発見があった。最初見たときは、すごい作品だと度肝を抜かれた。戦慄とともに一気に物語の世界に引き込まれた。この映画では重要なモチーフに中華的な宗教、道教や主人公のトラウマがある。宗教的思想をベースにしたサイコロジカル・ホラーという点では『セブン』や『羊たちの沈黙』に類するかもしれない。しかし、東洋人の私にはこの映画の表す恐怖や人間の心理はもっとリアルなものとして受けとめられた。猟奇的殺人や、新興宗教団、地獄の体現といかにも暗鬱で残忍なイメージの材料はそろっているが、この映画はそれだけではない。主人公の警官、黄火土(レオン・カーファイ)を中心に夫婦や親子の愛というものも感動的に描かれている。
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D O   U B   L   E     V   I   S   I   O   N
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 《レオン・カーファイのインタビュー記事より》
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「双瞳」は一般公開に先駆けて2002年5月のカンヌ映画祭でプレミア上映された。その上映後、満場の喝采の中、レオン・カーファイ(梁家輝)は感激の余り涙したという。彼にとってこの映画は数々の思いが詰まった作品となった。
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 2001年2月、香港で三ヶ月以上にわたって上演された舞台劇「煙雨紅船」の千秋楽を終えた家輝には、すでに次のオーファーがかかっていた。次回作に関しての問に、彼は「多分台湾で映画を撮る予定」としか言わなかったが、4月2日、「双瞳」は台湾で正式にクランクインした。そして6月23日のクランクアップまでの約3ヵ月間彼はほとんど台湾で過ごした。

 家族を愛する家庭的な家輝にとって、ロケといえども海外での生活が長くなると孤独で退屈な思いをするそうだ。しかしこの時ほど孤独感が極まったことはなかったと言う。台湾でのスタッフのうち顔見知りはわずかに二人、そればかりかほとんどのスタッフから疎外された感じを受け、仕事以外のプライベートな時間はほとんど一人でホテルの部屋に閉じこもっていたらしい。黄火土の孤独を肌で感じたという。これには実はわけがあって、監督の陳国富が家輝の役どころを配慮して周囲にわざと彼から遠ざかるように指示していたというのだ。そのせいだけではないにしても、映画の中の家輝のうらぶれた孤独な姿や家族に対する演技は真に迫っている。

 また、この作品は戦慄と驚愕の内容だが、彼は撮影時に映画以上の恐怖や奇遇を味わったそうである。ある病院の実験室で撮影した際、周りにあったおびただしい数の手足の標本が実は本物だったと後で知ったときは最も恐怖に震え上がったらしい。また家輝には双子の娘があるが、共演のデビッド・モースにも双子の子供がいると知り、不思議な偶然に驚いたとも言う。

 以前から国際的舞台での活躍が多い梁家輝。その演技の幅の広さには定評があり、たくさんの映画賞にも輝いている。2000年の中国映画「刮_」(トリートメント)では、中国電影大奨の最佳男主角(最優秀男優賞)を獲得した。以前の華やかさに最近は渋みが加わり、ますます彼の役者としての奥深さを感じる。「雙瞳」での演技は香港でも高く評価され、きたる第22回香港金像奨の最佳男主角のノミネート者にその名前があげられている。


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レポート/ by  水田美和

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