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5月9日'02

香  港  で  の  生  活

vol. 7

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旧正月の香港映画
田 中 秀 歩
(たなかひでほ)

 
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劉徳華(アンディ・ラウ)出演の旧正月映画

 旧 正月といえば、映画も大作や話題作が封切られる時期。ジャッキー・チェンやチャ 
ウ・シンチーといった大スターの作品も決まってこの時期に公開されていたが、最近は必ずしもそうではなく、今年も彼らの作品はないものの、大スターたちによるおめでたい雰囲気のコメディが3本並び、それらを見ると、旧正月映画の性質というものがよく分かって興味深い。 
旧正月向けの映画というのは、街の祝賀ムードの中で観るのに合う、内容がおめでたくて明るく楽しく観られる作品であり、今回の3本はその意味で非常に旧正月映画らしい。またその「おめでたい」ことの表現も香港的で面白い。では、その3本の2002年旧正月映画をそれぞれ紹介します。



「嫁 個 有 錢 人」(gaa3 goo3 yau5 chiin2 yan42002年2月7日香港公開 
監督:谷徳昭(ビンセント・コック) 
出演:鄭秀文(サミー・チェン)、任賢齊(リッチー・レン) 
 港女性の夢(というより必須?)である金持ちとの結婚。香港ではやはりそれは「おめでたい」ことの一つのようで、「嫁個有錢人」=有錢人(yau5 chiin2 yan4)(金持ち)に嫁ぐ、というそのものズバリのタイトルも非常に香港的だが、本作はあくまで軽やかなタッチの明るいコメディで、監督の谷徳昭(ビンセント・コック)も泥臭さや嫌みさを排して手堅くまとめているが、どこかしら彼の監督作「ゴージャス」に似た雰囲気もある。 
星空をタイトルバックにするのが好きなようで、今回は更にダイナミックに宇宙空間まで広がるが、地球をバックに「嫁個有錢人」のタイトルがドーンと現れると、香港女性にとって金持ちと結婚することはそんなに重要なことなのか、と思っておかしくなった。 
 鄭 秀文(サミー・チェン)は家業のプロパンガス店でプロパンの配送をしているが、周りの友人たちが金持ちと結婚して裕福な生活を送っているのを見せつけられ、自分も金持ちの男性と出会うべく行動を起こす。その行動の一つ、ミラノへ旅するその機内で任賢齊(リッチー・レン)と出会い、2人で美しいミラノをめぐって楽しむうち恋いが芽生えていくが、裕福に見えたリッチーが実は…という展開はよくあるし、その後のハッピーエンドへつながる流れや説定も強引ではあるが、旧正月の気分で気楽に見られるという意味ではまあ、これくらいおめでたくていいか、という感じた。サミーのかわいらしさと魅力は相変わらずで、それは特に明るいコメディで親しみやすい庶民的な女性であるほど輝くことが本作でより証明されている。リッチーはちょっと軽薄な感じがないではないが、アクのない明るいキャラクターは本作の色に合っていて、彼もまた庶民的な感じが嫌みがなくていい。 ほかのキャストも廬巧音(キャンディ・ロー)や張達明(チョン・ダッミン)ほかにぎやかで楽しく、特に本物の金持ちでサミーの前に現れる林海峰(ジャン・ラム)がトボけたいい味を出している。イタリア・ミラノのロケもいい雰囲気を出しているし、明るく楽しいコメディで気楽に観られるという点で、まさにおめでたい気分の中で観る映画である。 


「[o歴][o古][o歴][o古]新年財」(san1 niin4 chooi4
2002年2月8日香港公開 
監督:杜[王其]峯(ジョニー・トー)、 韋家輝(ワイ・カーファイ)
出演:劉徳華(アンディ・ラウ)、劉青雲(ラウ・チンワン)、古天樂(ルイス・クー)、梁詠[王其](ジジ・リョン)
  徳華(アンディ・ラウ)、劉青雲(ラウ・チンワン)、古天樂(ルイス・クー)、梁詠[其](ジジ・リョン)といったスター揃い、今や香港映画の稼ぎ頭となった杜[王其]峯(ジョニー・トー)らのスタッフによるおめでた映画であるが、麻雀の 映画だったので驚いた。あとで聞いたら「[o歴][o古][o歴][o古]」とは台湾の麻雀(maa4 jeuk2)の上がりの種類の名前だそうで、麻雀で勝って大もうけ、というのもまた香港ではとても「おめでたい」ことなのだろう。そして香港ではいかに麻雀が人々の生活にまで根づいて親しまれているかがよく分かる映画だが、それは観客の反応からも分かる。麻雀を知らないぼくは映画に出てくる麻雀の手やパイの並びがいかに凄いかは大体の事しか分からないが、麻雀シーンに対する地元観客の反応や歓声に直に触れられたのは面白かった。麻雀については詳しくは分からないのが残念ではあったが、コメディとしても娯楽的に面白く出来ているので、それでも充分楽しめることは確か。 
 オールスター映画といえど、結局は天才的な麻雀の腕を持つアンディ・ラウ中心の話で、そこに弟のルイス・クーとボケてしまっている母、いつもアンディを追い回し結婚を迫るおかしな恋人のジジ・リョン、アンディ兄弟をカモろうとするイカサマ麻雀集団のラウ・チンワンらがからんでくる形となり、彼らのアンサンブルが楽しいものの、やはり主役はアンディに持って行かれている。でもルイス・クーは生真面目だどお人好しなトボけた2枚目半の役を好演しているし、ラウ・チンワンもさすがの貫禄でうす汚なく荒っぽい敵役を愛きょうたっぷりに演じている。特に頑張っているのは何といってもジジ・リョンで胸に詰め物をしてでかい胸で現れたり、おかしな恰好はするわ、凄い表情やバカな演技も奮闘しており、その3枚目演技はかつてのお嬢様イメージが強かっただけに、何かがふっ切れたようなそのハジケぶりが目を引き、そして楽しい。 
 今 回のMVPはジジだったが、こういうバカなことをどんどんやってしまう(やらされる?)のが香港スターであり、その一番の晴れ舞台が「おめでたい」ということで何でも許される旧正月映画なのだろう。そしてそんな姿が魅力として輝くのも香港の女優なのである。 


「天下無雙 」(tiin1 haa6 mou4 seung12002年2月8日香港公開 
監督:劉鎮偉(ジェフ・ラウ)
出演:梁朝偉(トニー・レオン)、王菲(フェイ・ウォン)、張震(チャン・チェン)、趙薇(ビッキー・チャオ) 
 ちらは梁朝偉(トニー・レオン)、王菲(フェイ・ウォン)、張震(チャン・チェン)、趙薇(ビッキー・チャオ)の4大スター共演の時代劇コメディで、彼らがコメディ演技をしたり歌い踊ったりと、簡単に言うと「新春スターかくし芸大会」みたいなものだが、こういう時代劇コメディもまた、旧正月映画ではおなじみのものといえる。 だが、ギャグはすべり気味で、映画自体もつまらないとまではいかないが面白味に欠け、旧正月らしいハッピーさへは今一つ突き抜けられなかったのが残念な所で、今年の旧正月映画の中では一番面白くない。だが、王家衛(ウォン・カーワイ)製作で、トニー・レオン、フェイ・ウォンという日本での知名度が高いスターが主演であることから本作が一番日本で公開されやすいだろう。
 語はトニーとビッキー・チャオの兄妹と、実は皇族である姫のフェイ・ウォンとその兄のチャン・チェンが出会い、トニーとフェイ、ビッキーとチャン・チェンのそれぞれの恋の話となるが、フェイは身分を隠し男装しているためトニーに恋するものの彼には男と思われていて、その2人が右余曲折を経てハッピーエンドへと至るまでを描く。考えてみれば、皇族と結ばれるなんてビッキーは玉のこし、トニーは逆玉、ということでこれもWで「おめでたい」という事になるのだろうか。それに加えて歌って踊って騒いで、形としては一番本作が旧正月の雰囲気が出ているのだろうが、ただ空回りしてしまっている感は否めず、色々面白くしようとしてる試みは随所にみられるもののうまく行っていないので結果、観ててもそれほど楽しくはない。実際この映画が一番動員が少ないらしく、知り合いの香港人数人も口々に「好悶」(つまらない)と言っていた。 
 チャン・チェンは多分本作が始めてのコメディではないかと思うが、彼のコミカルな演技はなかなか新鮮かつ意外と合っている。ただ、途中からでかいアフロヘアーで登場してくるのは意味も分からなければ浮いてさえもいたが。こういうスベリ気味のギャグが本作ではいっぱいみられる。 張燿揚(ロイ・チョン)や葛民輝(エリック・コット)のせっかくのゲスト出演も今いち面白くなく、ただ朱茵(アテナ・チュウ)は男装、女装、コミカル演技と少ない出番ながら活躍し、その怪演はフェイとビッキーの主演女優2人より魅力があった。
 
 (留学レポート次回につづく)
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